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「住宅のライフサイクルコスト」という視点を持とう


家づくりを考えるとき、まずは「我が家の家計にとって、いくらまでなら家にお金をかけられるか?」という総額予算を決めることが重要です。
これは、ライフプランシミュレーションで見えてきます。

ただし——
家づくりの総額予算を決めたうえで、もうひとつ考えておきたい視点があります。

 

それが、「住宅のライフサイクルコスト」です。

建てるときだけじゃない。家には“住んでから”のコストもかかる

住宅にかかるお金というと、「建てるときの費用」ばかりに注目が集まりがちです。
ですが実際には、住み始めてからもさまざまな費用が長年にわたってかかり続けるのが現実です。

 

そして、どんな家を建てるかによって、これらのコストには大きな差が出てきます。

ライフサイクルコストの代表例

以下は、住み始めてから発生する代表的なコストと、その差を生む要因です。

コスト項目 内容・変動要因 具体例や注意点
 再建築費・解体費 耐久性・将来の用途

災害への耐性、壁体内結露による構造の腐食、シロアリによる構造の食害、造り込みすぎ、流行を追いかけすぎたデザイン。

修繕・メンテナンス費 建材・工法

外壁や屋根は素材により、10〜20年ごとに塗装や交換が必要。

家の形状や大きさによっても変わる。

光熱費 断熱・気密・太陽光の有無 高性能住宅なら冷暖房費を大幅カット可能
保険料(火災・地震) 耐震等級・構造・防火性 耐震等級3、省令準耐火構造で大幅割引も
税金(固定資産税など) 性能認定の有無 長期優良住宅は税の軽減措置あり
医療費(間接コスト) 換気・断熱・建材の安全性 ヒートショックのリスク、アレルギー悪化のリスクも

住み始めてからかかる費用を減らす場合は柔軟に

よく、「建築費が増えるからこの仕様はあきらめよう」という判断がされることがあります。
断熱・気密・耐久性・耐震性能など、住み始めてからのコストを下げるための建築費の増額であれば、長い目で見て“節約”になることも少なくありません。

そのような増額対応については、家づくりの総額予算を起点として、やりくりを考えたうえで取り入れる柔軟性もあってよいと思います。

まとめ:建築費だけでなく“生涯の家のコスト”で考える

 

家づくりの予算を考えるとき、建築費だけに目を向けるのではなく、

住み始めた後にかかるお金も含めた「トータルコスト」で判断することが大切です。

 

たとえば、こちらの絵にある流氷のように、

海面に見えている部分(=建築費)だけでなく、海面下に広がる見えない部分(=将来の支出)まで含めて、全体像をとらえる必要があります。

 

つまり、「見えるコスト」にとらわれすぎず、

流氷全体を小さくするように、将来の支出まで見据えた設計を進めていくことが、賢い家づくりといえるのです。

 

そのためには、まずライフプランシミュレーションで

「家にかけられる総予算」を明確にしつつ、

 

“将来の出費を減らすために、今どこにお金をかけるべきか?”

 

という視点で、初期費用の使い方を見極めることも重要です。

 

こうしたアプローチが、結果として

**長く安心して暮らせる「経済的な家づくり」**へとつながっていきます。